赤川次郎 『午前0時の忘れもの』

540冊目！

午前0時の忘れもの 赤川 次郎 （集英社文庫）　集英社 1997-09 by G-Tools

「ナツイチ・2011」より

1度映画化もされた名作（らしい）。事故で突然人生を絶たれた人たちが、もし深夜に1時間だけ別れを言いに現われたら？　ありそうでなかった筋書きです。

日本人なら、お盆やお彼岸に故人の霊が帰ってくると考え、供養や祭礼を行なう文化が浸透しています。でも、本当に生身で（冷たい体のままで）死んだ人に会えるとしたら、どうでしょう？

一歩まちがえるとホラー小説になってしまいそうですが、そこはユーモアも取り入れながら心温まる作品に仕上げているのが著者のすごいところです。（しかも裏表紙では「ファンタジー」とまで銘打ってあります）

しかも、物語の始まりは残された人一人１人に死者からの不思議なメッセージが届く場面。複数の人物たちの目線から丁寧に時間の流れを書いています。どうしてバスが事故に遭ってしまったのか、というミステリ要素は避け、愛する人たちと再会を果たした者たちが未来をどう生きようとするかに焦点が絞られています。

この小説に決まった主人公はいません。読者が自分に近いと思うキャラクターを選ぶもよし、ある登場人物のように傍観者として物語を見ているだけでもよし。読者に読み方の自由があるのも、長年愛されている理由の１つなのだと思います。

→この本にハマったら次はコレ!!
　　・中島 京子　『平成大家族』　（2020/09/22の記事）

（F市図書館で借りて・背表紙幅：1.2cm）

2016/04/05 (Tue) ナツイチ・2011（集英社文庫） Comment(0)