楡周平 『フェイク』

578冊目！

フェイク 楡 周平 （角川文庫）　角川書店 2006-08-25 by G-Tools

「発見！角川文庫・2011」より

「フェイク」という言葉で思い出すのは、「フェイクレザー」や「フェイクファー」。最近の時事ネタでは「フェイクニュース」なんて言葉もありますが、偽物という意味ではあまりいいイメージはありません。

小説の序盤から中盤にかけて登場するのが、高級品に見せかけて実は安物というワイン。下戸の私にはお酒の良し悪しは全くわかりませんが、もし専門家でも見抜けないワインが実在したら？　本当にこんな事件が起こりうるかもしれないと思うと、現実的でスリリングなお話です。

一連の出来事が起こるきっかけとなるのは、学歴や経済など社会的に劣等感を抱いた人々が出会っていくところ。

「這（は）い上がるためには、学歴も何も関係ない。本当に実力勝負、勉強以外のところで才能を発揮できる場を見つけ出さないことには、どうにもならないの」（p. 123）

弱みを抱えた者同士がつながり、互いの利害が一致したとき、 予想外の出来事が起こります。お酒の知識と共に語られる、ギャンブルの世界が一層スリリングな展開を演出しています。

→次に読みたい本：
　　・藤原 伊織　『テロリストのパラソル』　（2017/01/01の記事）

（F市図書館で借りて・背表紙幅：1.7cm）

2017/03/26 (Sun) 【角川文庫】 Comment(0)