あさのあつこ 『バッテリー〈5〉』

30冊目！

バッテリー〈5〉 あさの あつこ （角川文庫）　角川書店 2006-06 by G-Tools

「将来の夢とか希望とか、そんなものは、ひどくあやふやで、遠くに霞む山の頂きほどの確かさもない。それよりも、この指に摑（つか）むボールの感触、辛辣で本気の言葉、ミットに向かい合うときの胸の高鳴り……形にならない、目にも見えない、他人にうまく説明もできない諸々（もろもろ）のものの方が、ずっと確かだった。今、確かに自分のものだと信じられる」（p. 65-66）

この物語の主人公は、原田巧という中学一年生。でも、その先輩にあたる三年生たちへのスポットも大きくなってきて、彼らの物語として読んでみるのも面白いと思う。

高校受験と卒業を控えた三年生たち。たった2年の差、2歳しか違わないのに、体つきだけでなくて考え方や価値観、社会からの見方やかかわり方も大きく変わる。巧の2年後を暗に想像させるような演出としても読めるのでは。

巧と豪、門脇と瑞垣という二組の少年たちのペアの間で、それぞれの思いが交錯するところも読みどころ。さぁ最終巻では一体どんな展開が待ち受けていることやら…。

→「バッテリー」シリーズのほかの本：
　　・１　（2008/09/26の記事）
　　・２　（2008/09/28の記事）
　　・３　（2008/09/30の記事）
　　・４　（2008/10/04の記事）
　　・５
　　・６　（2008/10/17の記事）
　　・『ラスト・イニング』　（2017/08/20の記事）

→映画版はこちら：
　　・角川映画「バッテリー」　 http://www.kadokawa-pictures.jp/official/battery/

（実家で借りて・背表紙幅：1.1cm）

2008/10/14 (Tue) 【角川文庫】