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流れ星による読書日記。大学在学中に200冊を読破。現在のべ900冊目に突入中! 目指すは…1000冊?
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読書
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文学部在学中に223冊を読破。

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283冊目!

私は貝になりたい 私は貝になりたい
あるBC級戦犯の叫び

加藤 哲太郎

春秋社 1994-10-25


by G-Tools
この夏、映画「私は貝になりたい」(中居正広主演)を観ました。実話だと思って原作を読んだのですが、加藤さんのフィクションだったことを知り、今は複雑な思いです。

実際にBC級戦犯として死刑判決を受けた著者は、獄中内で著作を書いたり、家族への手紙をしたためたりしていました。「貝になりたい」の原案も、このときに書いたフィクションとしての遺書の形式をとっていました。

当時、戦犯への一般国民の目線は厳しく、戦犯が刑務所の中で何を考えているか声を上げる場はほとんどなかったそうです。著者もペンネームを使い、架空の曹長の遺書の中で戦争批判の自論を展開しています。

自分が侵略戦争に加担したことへの反省。そして、戦争を繰り返さないために、従軍した一人ひとりに自らの罪と向き合うことの重要性を説く強い思い。獄中でも本を読んで学び続け、思索を続けた著者のひたむきな姿が、文章からも伝わってきました。

読みながら、私は戦犯のことを何も知らなかったのだと気づきました。戦犯どころか、日本が戦争中に何をしていたか、もし自分も戦時中に生まれていたらどんな人生になっていたのか、まったく考えてきませんでした。

現在の日本が領土問題で揺らぐ中、中国や韓国が日本をどう思っているか、実際に日本が過去に何をしてきたのか、今の日本を生きる私たちは知識がなさすぎるのではないでしょうか。

収録されている手記「戦争は犯罪であるか」の中で、著者はこう述べています。

「中国戦犯がアッサリ簡単に釈放されてしまったという事実を、唯一の判断資料として、将来の日本国民が、中国で犯した日本軍人の戦争犯罪を無視したり、過小評価したりするようなことになれば、それはとんでもない認識不足で、不幸な事態をひきおこす恐れがあると思う」 (p. 47)

私には、今の日本の外交問題を予言しているようにも思えてなりません。

戦争中に日本人は何をしたのか、きちんと現代に伝えられてこなかったのは、特に軍に関わった人々の生の声が届かなかったためではないでしょうか。その中で、数々の加藤さんの手記がこうしてまとめられ、私たちの手元に残されたことはとても貴重なことだと思います。

久しぶりに、いい本にめぐり合えたと思える1冊でした。

→本文中に登場した本:
  ・p. 127 バック 『かもめのジョナサン』 (2005/09/02の記事
  ・p. 166 ダンテ 『神曲』 (2012/01/21の記事

→映画のWebサイト:
  ・「私は貝になりたい」(2008年・リメイク版) (東宝サイト内) 
   http://www.toho.co.jp/lineup/kaininaritai/

(F市図書館で借りて・背表紙幅:2.0cm)
<収録されている手記の一覧>

・狂える戦犯死刑囚
・戦争は犯罪であるか
・私達は再軍備の引き換え切符ではない
・水洗便所の水音
・私はなぜ「貝になりたい」の遺書を書いたか

・恩師への手紙
・獄中から家族へ宛てた手紙

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