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流れ星による読書日記。大学在学中に200冊を読破。現在のべ900冊目に突入中! 目指すは…1000冊?
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 プロフィール 
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流れ星
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女性
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アルバイト
趣味:
読書
自己紹介:
文学部在学中に223冊を読破。

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730冊目!

(角川文庫・昭和61年版)

<発見!角川文庫2011>より

以前読んだのがいつだったか、忘れていました。このブログを書き出す前だったかな、と思ったら、ちゃんと記事が残ってた。。。20年近く前でした。

当時は、私の読解力が追い付いていなかったこともあって、暗くて重苦しいテーマの医療小説、くらいの印象しか残っていません。今改めて読み終わって、全く違う感覚になっています。

第1章の冒頭は、ある男性が1人の医師に出会う場面です。戦後の復興が始まり、新しい住宅地に引っ越してきた彼は、自分に気胸処置をしてもらえる医師を探しています。

風呂屋でガソリンスタンドの主人と話す中で、街の男性たちはみな出征の経験があることが語られます。現代の日本とは違って、昭和20~30年ごろは誰もが戦争の記憶をまだ生々しくもっていたという空気感が伝わってきます。

ガソリンスタンドの主人には、迫撃砲でやられたという火傷の跡が右肩に残っており、洋服屋の店主は、南京で憲兵をしていたと述べられます。

「考えてみるとあの二人は二人とも人を殺した過去を持っているのだ。(中略)そして勝呂(すぐろ)医師の場合も同じことだ」(p. 22)

医師が医学生だった頃、アメリカ軍人捕虜の生体解剖の場に立ち会っていたという過去を知り、語り手の男性は「人殺しが何もなかったかのように日常生活を送っている」と気づきます。

以前、私がこの本を読んだときは、病院という狭い場所だけにクローズアップされた物語のように感じたのですが、冒頭で著者はきちんと「勝呂だけではなくどの日本人も似た経験を持っている」ことを示唆していたのです。

「人間は自分を押しながすものから――運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」(p. 75)

新しく住宅地が整備される中で、町の住民たちは毎日埃にまみれながら戦後の暮らしを整えています。埃はおそらく人殺しや罪の比喩でしょう。どんなに風呂屋へ通って体をきれいにしても、風がふけば再び埃は顔に体に、どの人間にも公平に積もっていく。以前は読み落としていた著者の意図に、ようやく自力で気づくことができました。

他の作品も、もう1度読み直したらいろいろ発見があるかも。

→遠藤周作の他の著書:
  ・『海と毒薬』 ※新潮文庫版 (2005/01/11の記事
  ・『女の一生〈1部〉 キクの場合』 (2010/08/27の記事
  ・『深い河』 (2012/02/22の記事

→次に読みたい本を発見!
  ・貴志 祐介 『青の炎』 (2021/10/26の記事

(F市図書館で借りて・背表紙幅:1.2cm)

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