吉田修一 『あの空の下で』

596冊目！

あの空の下で 吉田 修一 （集英社文庫）　集英社 2011-05-20 by G-Tools

「ナツイチ・2011」より

短編小説とエッセイを1冊にまとめた珍しい本です。もともとは大手航空会社の機内誌に連載されていた文章だそうで、テーマはずばり「旅」。飛行機が直接登場しない作品も含まれています。

私自身はここ10年ほど、体調を崩して体力も落ちたのか、遠出したり泊りがけで出掛けたりすると何かしら体調不良を起こしがち(- - ;　そのため、ほとんど旅行らしい旅行というものには行けません。

しかし逆に「元気になったら行ってみたい」場所は以前より増えたと感じます。多くは読書を通じて興味を持った場所、テレビドラマや旅番組で特集されていた場所などです。

バイト先の同僚が旅や帰省先のお土産を持ってきてくれることもあります。私はいつももらってばかりで、なかなか手土産を配る機会がなくて恐縮していますが・・・。

→本文中に登場した本：
　　・p. 169　よしもと ばなな　『なんくるない』　（2012/10/15の記事）

→著者の他の本：
　　・『さよなら渓谷』　（2014/06/25の記事）
　　・「少年前夜」　『いつか、君へ Boys』収録　（2015/07/21の記事）

→この本にハマったら次はコレ!!
　　・鎌田 實　『なげださない』　（2015/06/10の記事）

（古本屋で購入・背表紙幅：0.8cm）

2017/11/01 (Wed) ナツイチ・2011（集英社文庫） Comment(0)

太宰治 『人間失格』

574冊目！

人間失格 太宰 治 (集英社文庫)　集英社 1990-11-20 by G-Tools

学生の頃に1度読んだはずですが、内容をよく覚えていません。当時の私には響くものがほとんどなかったということでしょうか。

「地獄は信ぜられても、天国の存在は、どうしても信ぜられなかったのです」（p. 106）

今読んでみると、うつ状態になったときの自分と主人公の考え方がよく似ていて、共感できる部分がたくさんありました。世間にとけこめない息苦しさ、何かやらなければという焦り、それでいて結果が出せないやるせなさ。。。

太宰の気持ちが少しわかるようになったことは嬉しいけど、なんだか複雑です。

→作者の他の作品：
　　・『きりぎりす』　（2021/05/22の記事）

（古本屋で購入・背表紙幅：0.9cm）

2017/02/05 (Sun) ナツイチ・2011（集英社文庫） Comment(0)

赤川次郎 『午前0時の忘れもの』

540冊目！

午前0時の忘れもの 赤川 次郎 （集英社文庫）　集英社 1997-09 by G-Tools

「ナツイチ・2011」より

1度映画化もされた名作（らしい）。事故で突然人生を絶たれた人たちが、もし深夜に1時間だけ別れを言いに現われたら？　ありそうでなかった筋書きです。

日本人なら、お盆やお彼岸に故人の霊が帰ってくると考え、供養や祭礼を行なう文化が浸透しています。でも、本当に生身で（冷たい体のままで）死んだ人に会えるとしたら、どうでしょう？

一歩まちがえるとホラー小説になってしまいそうですが、そこはユーモアも取り入れながら心温まる作品に仕上げているのが著者のすごいところです。（しかも裏表紙では「ファンタジー」とまで銘打ってあります）

しかも、物語の始まりは残された人一人１人に死者からの不思議なメッセージが届く場面。複数の人物たちの目線から丁寧に時間の流れを書いています。どうしてバスが事故に遭ってしまったのか、というミステリ要素は避け、愛する人たちと再会を果たした者たちが未来をどう生きようとするかに焦点が絞られています。

この小説に決まった主人公はいません。読者が自分に近いと思うキャラクターを選ぶもよし、ある登場人物のように傍観者として物語を見ているだけでもよし。読者に読み方の自由があるのも、長年愛されている理由の１つなのだと思います。

→この本にハマったら次はコレ!!
　　・中島 京子　『平成大家族』　（2020/09/22の記事）

（F市図書館で借りて・背表紙幅：1.2cm）

2016/04/05 (Tue) ナツイチ・2011（集英社文庫） Comment(0)

石田衣良 『スローグッドバイ』

533冊目！

スローグッドバイ 石田 衣良 （集英社文庫）　集英社 2005-05-20 by G-Tools

「ナツイチ2011」

著者の恋愛短編作品を初めて収録したという1冊です。今では恋愛小説の名手のイメージが強いですが、発表当時はまだ挑戦分野だったようです。

読んでみると、新ジャンルに踏み込んだにも関わらず、不慣れな様子もありません。むしろこの後に発表される主要作品と並べても、遜色ない印象でした。

出会い・別れ・運命の恋愛・・・さまざまな面から恋愛小説は書かれていますが、この1冊ではどれも読むことができます。10の作品からどれが1番好みにあうか、考えながら読むと楽しいです。

→著者の他の作品：
　　・『娼年』　（2010/01/05の記事）
　　・『逝年』　（2010/03/25の記事）
　　・『美丘』　（2010/09/24の記事）
　　・『4TEEN【フォーティーン】』　（2015/10/25の記事）
　　・『6TEEN【シックスティーン】』　（2016/09/02の記事）

→この本にハマったら次はコレ!!
　　・森 鴎外　『舞姫』　（<2011/11/22の記事）

（F市図書館で借りて・背表紙幅：1.1cm）

2016/03/14 (Mon) ナツイチ・2011（集英社文庫）

伊坂幸太郎 『終末のフール』

491冊目！

終末のフール 伊坂 幸太郎 （集英社文庫）　集英社 2009-06-26 by G-Tools

「ナツイチ・2011」より

あと3年で小惑星が地球に衝突、世界が終わるとしたら？

奇抜な設定にはじめは驚きましたが、目を通していくうちそのリアルさに引き込まれてしまいました。休憩しようとページを閉じるたび、 現実の世界を見て、違和感を覚えたものです。

普段の私たちが、いかに「明日」を信じこんで生きていることか。今の暮らしが明日も１年先も続くことが、どんなに人間の心と社会に安定を与えてくれているか。

登場する老若男女の市民たち。彼らはパニックに陥った人々の暴動の中も生き延び、残された日々を生きながら、最後の時を静かに待っています。連作短編なので「もし自分だったら？」と考えるヒントも見つけやすいはず。

→著者の他の作品：
　　・『ゴールデンスランバー』　（2013/07/06の記事）
　　・『グラスホッパー』　（2013/10/03の記事）
　　・『マリアビートル』　（2014/02/02の記事）
　　・『砂漠』　（2014/08/15の記事）

→この本にハマったら次はコレ！
　　・赤川 次郎　『午前0時の忘れもの』　（2016/04/05の記事）

（F市図書館で借りて・背表紙幅：1.5cm）

2015/07/12 (Sun) ナツイチ・2011（集英社文庫）

鎌田實 『なげださない』

483冊目！

なげださない 鎌田 實 （集英社文庫）　集英社 2011-05-20 by G-Tools

「ナツイチ・2011」より

久しぶりにいい本を読んだ。

ここ数ヶ月、自分が置かれた状況にイライラしていた節もあったのだけど、この本が少し頭を冷やしてくれたのかもしれない。

震災の直後に出版されたので、以下のような言葉で始まっています。

「大変なことが起こった。東日本大震災。（中略）
でも、未来を信じて、なげださない人たちがいる。
悲しくつらくても、笑顔を忘れず、立ち上がろうとする人がいる」（改行本文　p. 3）

本文には、阪神大震災やチェルノブイリ原発事故で被害を受けた人たちも登場します。3月11日から4年以上が過ぎ、あの時テレビで見た光景も一緒に思い出しました。

今なら、鎌田先生は東北の被災者や福島の避難者のことも書き込むはず。どんなに困難なことが起こっても、生きることにまっすぐ向き合おうとする人はきっといる。

ただ、私の周りにいたとしても、はっきり見えていないだけで。

→本文中で紹介された本：
　　・p. 233　ルナール　『にんじん』　（2015/11/05の記事）

→著者の他の本：
　　・『がんばらない』　（2013/08/08の記事）
　　・『あきらめない』　（2013/07/10の記事）

→この本にハマったら次はコレ！
　　・斎藤 茂太　『人生がラクになる心の「立ち直り」術』　（後日挑戦予定）

（古本屋で購入・背表紙幅：1.3cm）

2015/06/10 (Wed) ナツイチ・2011（集英社文庫）